国家の役割——福祉の充実こそが富をもたらす。

これからの“国家の役割”は、国民の生活の安心と安全を保障していくことを軸に考えられるべきであると考えます。 いわゆる福祉国家として存立していくことを、これからのあるべき国家像として求めていきたいということです。 それを裏付ける思想は、WABismにおいては「人間の命は富の源泉」とか「人間の命は無限の資源」と設定しています。 このような考えの下での国家のシステム、その極くラフな構想を今ここで描くとするならば、以下のようなことが考えられるかと思います。 国家の業務は大きく三つのカテゴリーに分けられます。すなわち、 1. 国内の統治・国際社会との協調、2.経済活動の支援・調整、3.福祉行政 です。 1. について 参加型民主主義のシステムを構築して、統治権のっ主体は国民であることを明瞭化します。 参加型民主主義については、当ブログの“国家の役割”のカテゴリーで書いてきました。 模索的な局面がいろいろあるかと思いますが、基本的な支柱としては、ロザンヴァロン(フランスの政治哲学者)が提示している次のようなアイデアがあります。 「民主的機能評議会:行使の民主主義を法的に定式化した原理(統治者の高潔さ、政府活動と制度の透明性など)の番人の役割 公共委員会:公共政策の決定や行政組織の実務あるいは各分野での公的議論の開催に関して、それぞれの民主的な質を評価する役割 市民的監視団体:内閣・行政府の活動の監視を専門とし、市民の政治関与(の促進)、市…

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これからの国家の役割—— 支配と戦争の暴力装置から、”格差解消”システムへ

カテゴリー「国家の役割」では、これまでは統治権をテーマにして、 統治の主体は国民であるべきだということで、参加型民主主義の可能性について書いてきました。 これからは、“国家の役割”を福祉行政(富の再分配、格差の解消)というところに求めて、論じていきたいと思います。 今回は本題に入る前に、そもそも“国家の役割”がその長い歴史の過程でどのように変遷してきたかというところをおおまかに振り返り、 将来において求められるべき福祉行政システムとしての国家像へとつないでおくことにします。 そもそも国家とは何かということですが、フランスの伝統的な考え方に依りますと、 たとえば18世紀のルソーの『人間不平等起源論』でも論じられているように、 地域の共同体間での貧富の差ということがひとつのモチベーションとなって、 共同体の集合を統合していくシステムとしての国家が形成されます。 そこでの国家の役割は、地域共同体の統合および統治、労働力や資源の確保のための領土の拡張、 その必然的成り行きとしての他国との戦争、といったことが挙げられます。 このイメージが古代に始まって中世・近世からまでの国家観のアウトラインを成し、 そして近代(産業革命以降)に入って産業国家として更新されると、資本の管理というもう一つの役割が追加されてきました。 20世紀には更に資本主義と共産主義のイデオロギー上の対立が発生し、各々の主体を国家が担っていくようになりました。 かくして国…

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井上まさじの絵画に見る“侘び”の美学(続) 侘びと萌え

(前回からのつづき) 井上さんの世界はモノトーンな作調のものだけではなくて、むしろ現在は色の世界を表すものの方が主流といえます。 筆者が井上さんに出会った2006,7年ごろにはすでにアクリル絵の具を素材にした色彩の世界を表していました。 その特徴は技法に端的に現れています。 出会ったころに技法の説明を聞いたことがありますが、筆者が理解した範囲で紹介しますと、 絵の具を薄くキャンバスに塗っていく作業を、色を異なえて何層かに積み重ね、 しばらく時間をおいて(数ヶ月から1年ぐらい)どんな色を塗ったかの記憶が不確かになってきた段階で、 層を成している絵の具の皮膜を線刻していきます。 切っ先の鋭い彫刻刀のような刃物で0コンマ1mmとか2mmとかの深さに彫っていきます。 すると上の層の絵の具に覆われて隠れていた下の層の絵の具が現れてくるというやり方です。 線刻の密度は、丸を描いていく作業と同じくらいに高いものと思われます。 また、下の層にどんな色を塗ったかの記憶が曖昧になっているので、色の出方の偶然性も高くなっています。 画面をクローズアップで見ると絵の具が粒子状になっているのがわかります。 それで絵の表面が粒の小さな砂で描いたようなざらざらした感じがあり、色の調子にも独特の陰翳が伴い、 また見る角度によって微妙に変化していきます。 距離を置いてみると抽象画のように見えますが、自然界の光景を切り取ってきたようにも見えたりしま…

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