一汁一菜、極的で総合的な食の生活 ――土井善晴著『一汁一菜でよいという提案』に依りつつ
テレビの料理番組でおなじみの料理研究家土井善晴氏が書いた『一汁一菜でよいという提案』という本がベストセラーになっているようです。
このタイトルに惹かれて私も読んでみましたら、当ブログのメインテーマであるWABismの精神を過不足なく伝えてくれているような内容でしたので、ここでも紹介させていただきます。
一汁一菜という言葉は説明するまでもないかと思いますが、念のために書いておきますと、
普通には一汁三菜という言い方がスタンダードで、三菜は焼物(焼き魚)・煮物(野菜の煮たもの)・膾の三種を言います。
土井氏が提案する一汁一菜はご飯と味噌汁と香の物(漬物)です。
WABismの趣旨としても一汁三菜が標準ですが、しかし一汁一菜はさらに突き詰められています。
そして、生きていくための健康の維持とエネルギーの補給のためには最低限それだけは必要であるとともに、ある意味ではそれで充分と考えることもできます。
土井氏の著書は、「ある意味ではそれで充分」と言いうるところの領域を話題にしています。
それがまさしくWABismの精神の核心を衝いていると読めるわけです。
一汁一菜の核心は次のように表されています。
「暮らしにおいて大切なことは、自分自身の心の置き場、心地よい場所に帰ってくる生活のリズムを作ることだと思います。
その柱となるのが食事です。
一日、一日、必ず自分がコントロールしているところへ帰ってくることです。
それは一汁一菜です。一…